黒鯛心悸TAKE2 阿多田島「中川バエ」 夏の磯チヌ編 百合野崇 

百合野崇 TAKE2 
広島スタートライン 2012.9掲載

 皆様こんにちは、猛暑日が続いておりますが、魚釣りには行かれてますか?特に磯釣りが好きなフカセ釣り師は、今時期、熱せられたフライパン状態になった磯の上で、まるでポップコーンが弾ける音のように『アッチチ、アチチッ』っと、連呼しながら竿だしされてることでしょう(笑)

 さて今回紹介させていただく釣り場は、私ゆりちゃんにとっての瀬戸内ホームグランドであり、私のチヌ釣り道場ともいえる場所、広島県大竹の阿多田島。その中のひとつ「中川バエ」です。

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 この「中川バエ」は、北西向きの磯で、背中側すぐ後ろは背の高い樹木が生い茂っているため、太陽が東側にあるときは、適度な日陰を作ってくれます。因みにポイントは、船付付近で足場の良い場所であるということ。目の前に筏が有りますので、その筏の方向に向かってチヌを狙って下さい。

 この「中川バエ」は、ノッコミシーズンから冬までのロングランにて、良い釣果をもたらしてくれる釣り場でもあります。7月中旬、いつもお世話になっている大知渡船に乗り込み、この「中川バエ」に出撃してまいりました。

 この日はそろそろノッコミから回復した良型のチヌが動き始めるのでは?という釣り人皆得意の『捕らぬ狸の・・』で変な期待と希望だけはちゃっかり持っています(笑)

 仕掛けは、竿はシマノ・鱗海RB0号、道糸1.5号、ウキは大知遠投SP00号、アタリフカセS―-G5、ハリス1号、針は金龍のSS勝負チヌ2号を使用。とりあえず大物の期待はありますが、いつも通り細仕掛けのノーガンの状態から開始です。

 撒き餌は、マルキュー社の、瀬戸内チヌ、チヌパワームギ、チヌパワーダッシュ、チヌパワーV10白を各1袋に、オキアミ2角。この撒き餌の配合が、最近ゆりちゃんのお気に入り♪付け餌には、スーパーハードL、喰わせダンゴの赤、白の3種類。子イワシやフグが多いので、基本的にはダンゴ餌メインになります。

 開始早々ちょうど満潮時、撒き餌にボラ、子イワシが反応しており、海の状態は良好のようです。ボラはチヌの呼び水的な存在。ボラの活性が良いということは、チヌにとっても良いことだと思って良いです。撒き餌に群がったボラが作る大きな波紋を見ながら、「すぐにチヌが喰って来そうだな」っと、思っていたその時、さっそく本命のアタリ!

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 釣り座より、左側で掛けたのですが、とてもパワフル、道糸がはじき出され、主導権をとれず、一気に右側にもっていかれ、根に巻かれそうになったところで、必死で踏ん張り耐えます。この時、ハリスが擦れる嫌な感覚が手元まで伝わってきますが、何とか向きを変えることに成功し、出しては巻きを数回繰り返しながら、ゆっくりと足元まで寄せてきます。

しかし、ちょうど潮は満潮時、ハリスも竿1本の5mあるので、なかなか水面を割りフィニッシュをすることができません。「やたら元気なチヌだな」と思っていましたが、水面下50㎝ぐらいで薄ら見えた魚体は、まさしく最初に期待・希望していたような良型のチヌ(驚)思っていた以上のあまりの良型に変な力が入ってしまい、さらにフィニッシュまで持ち込むのを困難にさせます。

 足元の沈み瀬を這うように泳ぐチヌに「ドギマギ」、いつ瀬に張り付かれるかという不安がよぎり、とうとう我慢できず根気負け、強引に水面を割ろうとさらに力を入れたと同時に、「プチッ」っと、乾いた音が響き、大チヌを目の前にしてハリス切れによる大バラシをしてしまいました(涙)。竿出し早々の出来事、さらに自分の未熟さと、ショックを隠せずしばらく放心状態でした(笑)。

 このことを後から、大知昭名人、大知正人名人の親子に尋ねたところ、「落ち着いてさらに足場の高いところに移動すれば、簡単に水面を割ることができる」というまったく同じ意見を頂きました。

 パニックになった時点で負け、改めてどんな状況でも落ち着いて、状況判断しつつやり取りしないといけないと実感しました。この経験を生かして、次回また大チヌに出くわした時は、必ずフィニッシュまで持ち込んでみせます?(笑)

 さて、気を取り直して再開します。依然、ボラの反応はすこぶる良好で、すぐにまた本命のアタリ、先ほどバラしたチヌの引きには劣りますが、この日最大(49㎝)を釣ることができました。

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 それから潮が下げに入り、水潮になってしまい喰いが下がってしまいましたが、ポツリポツリっと本命のチヌを釣っていき、竿納までに7枚のチヌを釣ることができました。この日は、色々試した中で、ノーガンで浮いたチヌを釣ることが1番良かったようです。

 本誌を読まれる時は、まさに好シーズン。暑いからといって、クーラーの効いた部屋に閉じこもらず、海に出て気持ちのよい汗をかきながら竿出して美味しい海の幸を釣ってみるのも悪くないですよ♪釣られたような良型の真鯛も秋の間までは高確率で釣れますし、もうすぐ型の良いサヨリ、キスなんかも磯から釣れ始めるはずです。

当日同磯した釣友2人も良型真鯛や良型のチヌをゲットしました。実は好釣果が期待できるのが夏磯なのです。ただ、夏の釣りで一番気をつけなくてはならないのが水分補給と塩分摂取です。スポーツドリンク系など多少でも塩分が入った飲料水がおすすめです。適度にクールダウンの休憩をいれつつ、ゆっくり釣ることが夏の釣りだと思います。

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 最後に阿多田島、ゆりちゃん夏おすすめの磯を紹介致します。どの釣り場も、午前中日陰が出来やすい釣り場です。

今回紹介した「中川バエ」、「ヒナダン」、「北1番」など、他内浦周りもおすすめです。大きな口開けて待ってますよ♪

黒鯛心悸TAKE1 百合野崇アクアチャンピオンシップトーナメント大会レポート

※広島スタートライン 2012年7月号

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 アクアチャンピオンシップ トーナメント大会レポート
 皆様はじめまして、山口県のふく(河豚)の町、関門海峡ある下関より、瀬戸内メインに北部九州まで足を延ばしつつ、春夏秋冬黒鯛の鼓動を感じたく、駆けずり回っております、「ゆりちゃん」こと百合野崇と申します。

 チヌ釣り歴は15年を迎えようとしており、ここ3年は競技大会等にも恐れ多いながら参戦はしておりますが、腕はビギナー並、熱だけは全国トップクラス級の万年三流チヌ釣り師でございます。こんな小生でも、釣りの神様に熱が通じチヌに同情してもらったのか、2012シマノジャパンカップ黒鯛徳山予選なんと総合3位にて、全国大会の切符を頂くことになりました。たまにこんなサプライズがあるから、またチヌ釣りにさらにドップリ嵌ってしまう要因にもなってしまいます。
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 私と同じように、瀬戸内の海の素晴らしさ、魚釣りの楽しさ、競技会等の面白さ、色んな角度から「黒鯛の鼓動」を皆さんにお伝えしたく、時に不定期ではございますが、「黒鯛心悸」として執筆させて頂きます。

 今年は、昨年から続いた厳冬の影響で、日本各地でチヌノッコミは遅れ気味との知らせがたびたび耳に入るのですが、瀬戸内も例外ではなく、6月中旬時点で平均水温よりも2度近く低い状況が続いていました。そんな中、私が所属させて貰っております、本誌でもおなじみの大知昭・豊名人率いる精鋭チームアクアの年に一度開催される大イベント「第16回アクアチャンピオンシップトーナメント大会」が開催されました。

 この大会は、昨年度のチャンピオンシップ上位者、毎月開催されるアクア杯の年間トータルポイント上位者、ショップアクアの推薦者の合計18名が、負けたら終わりのトーナメント方式で争う大会です。上位2名が、8月に開催される名人戦の権利を得ることが出来ます。私は、アクア杯のポイントがギリギリ貯まっており、有り難く大会に出場して参りました。また、来年のジャパンカップ決勝のプラクティスとしても、私にとってかなり好都合な経験をすることができます。

 この日は、2日前にまとまった雨の影響が懸念されるのと、まだまだ水温が安定しておらず釣果が不安定ですが、時と場所によっては、軽く二桁行くような好釣果も情報として耳に入ってきます。ちなみに、ショップアクアのウェブサイトにて、近況から過去数年間の釣果が全て載ってますし、電話でも店長のヒロトさんが釣果の具合を教えてくれますので、大竹に行かれる時は是非参考にされて下さい。

 さて、大会のほうですが、できれば好釣果に恵まれるべく秘策を、と言ってもこれといった秘策は無く、普段通りの撒き餌のレシピは、オキアミ2枚、愛用マルキュー社のチヌパワーダッシュ、チヌパワームギ、チヌパワーV10白、瀬戸内チヌ半分。しいて言えば、ボラを集めやすいチヌスパイスを1袋入れたぐらいです。「ボラを集めて、チヌの活性を上げ、浮かせて釣る」これが、秘策というよりも私の作戦でしょうか?付餌は、同社の喰わせオキアミ、喰わせダンゴの2種類(赤、白)です。

 1回戦(50分×2:内浦横)、朝抽選によって各対戦対手が決まり、私は、昨年同様、峯本選手との対戦です。竿は1号、道糸は東レブラックマスターの1・5号、ウキは大知ウキ00号、アタリフカセウキのS、ハリスは東レのガイアの1号、針は、クロ針の6号で、いつもと変わらない仕掛けで挑みます。

 やはり雨の影響か、水温が思ったよりも低く、開始早々、魚の反応が悪くたまにベラとフグが釣れるのみ、期待してたボラの姿も一切ありません(涙)足元から徐々に離して、遠投をメインにチヌの魚信を探りますが、これといった見せ場、変化もなくあっという間に前半戦終了。対戦者の峯本選手も、同様な感じでした。
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 後半戦は、峯本選手は、さらに遠投し離しはじめ、私の遠投力では敵わないと思い、潮目の筋、確実に付け餌を撒餌に同調できる中間距離をメインに、1点集中で探っていきますが、これまたフグがサイズアップしたぐらいで、本命のチヌを釣ることができず、お互いノーフィッシュ。抽選により、申し訳なく私が2回戦に駒を進めることが出来ました。他の釣り場も、釣果が無く、抽選による勝敗がほとんどでした(汗)

▼2回戦(50分×3、外浦スベリ)、先日の徳山で、ダイワのバトルカップ決勝の切符を手に入れた川井選手、九州チヌのエキスパート、坂本選手との3名の対戦です。仕掛けは、ハリスに打ったガン玉が小さくなるぐらいで、1回戦同様です。
 釣り場は、外浦のスベリ。初めて竿出す場所ですが、南向きに面しており、冬場は好釣果が得られやすい釣り場です。時間の経ち、大分日が昇って水温が上昇しているはずなので、期待できます。

 前半戦、一番左に入った私は、早い段階でどんどん遠投して、チヌを探っていきますが、やはり水温が上がったようで、餌取りの反応が良く、スズメ鯛、グレ、ベラ、フグとかなり反応が良いようです。ただ、期待していたボラはここでも居ません。開始15分、竿先を持っていくような当たりがあり、本命のチヌかと思いましたが、上がってきたのは30cmを超えるグレ。予想外の来客にビックリしましたが、本命ではないので残念っ!

 30分を過ぎたところで、真ん中に入っていた河井選手がプリッとした40cm前後の本命のチヌをゲット!チヌがいることが分かり、期待と気合が入りますが、川井選手が釣った1匹以降、時間だけ過ぎて交代。

 中盤戦、先ほど川井選手が釣った釣り座入ります、地形からしてもこの場所が、本命の釣座だと思います?遠投メインに、たまに手前も探りながら、なんとか本日1匹目のチヌを釣るべく頑張ります。開始早々、ダンゴで、また道糸を持っていくアタリがあり、今度こそ本命と思ったのですが、上がってきたのは、結婚式の披露宴で塩焼きとして出てくるような真鯛(笑)鯛は鯛でも、色違いなので対象魚外。この後、さらに水温が上がったのか、さらに餌取りの活性が上がり、付け餌が一切残らない状況が続き大苦戦。坂本選手、リードしている川井選手も私と同じような状況なようです。後半戦も、状況が変わらず、敗退を期してしましました。勝ち残った川井選手に「決勝戦頑張って下さい!」っと、激励し敗退した選手全員で、決勝戦を見学することになります。

▼決勝戦(30分×3、ヒナダン)、川井選手、猿屋選手、楢原選手の3名で、この内、上位2名が、名人戦の切符を手に入れることができます。決勝戦では、撒き餌、付け餌が支給され、オキアミ1枚に、マルキュー社のムチヌパワームギ、瀬戸内チヌ、チヌパワーダッシュ1kg、付け餌は、同社喰わせオキアミ、喰わせダンゴの赤の2種類。

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 決勝に残られた3名は、説明不必要なぐらいの実力者で、きっとこの本誌を読まれてる方々にも、存じ上げる方は多くいらっしゃるかと思います。実力者3名の釣りを1度に拝見できるのも、この大会の醍醐味でもあり、本当に勉強になります。独学よりも、上手な方の釣りを見て学んだほうが、上手くなるには、遥かに近道だと思います。この時、幸いにして、私は猿屋選手のサポート役になり、間近で邪魔?じゃなくて猿屋選手の釣りを拝見できることが出来ました(嬉)
 また、どんなに状況が悪くてもきちんと見せ場を作るのが、実力者といわれる由縁だなと感じた日でした。前半戦早々に、川井選手が40cmぐらいのチヌを1匹先制したのですが、状況が好転しないまま時間だけが過ぎます。

 このまま逃げ切りかと思われた最終ラウンド。しかも、なんと終了15秒前に楢原選手が、本命のアタリ!ルールでは、時間内掛かった本命は、3分の猶予が与えられ、3分内に取り込みさえすれば、時間が過ぎても有効なんです。楢原選手が、見事時間内に取り込んだチヌは、川井選手と同じく40cm前後のチヌ。見た目では、ほとんど差が分からない、かなり緊迫した決勝戦でした。

 栄えある第16回チャンピオンシップトーナメント大会の優勝は、僅差の良型で逃げ切った川井選手!
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おめでとうございます!川井選手と、楢原選手も2名は8月に開催される名人位をかけた名人戦で、再び対戦することになります。

 この対戦は、アクア杯と同日開催されると思いますので、興味ある方は、ぜひ参加のほどよろしくお願いいたします。毎月開催されるアクア杯は、オープン参加が可能な大会で、どなたでも参加できます。競技方法は、チヌ1匹の寸法。誰にでもチャンスのある大会内容です。そして、ぜひポイントを貯めてもらって、来年のチャンピオンシップにご参加下さい!皆様の参加、アクア一同お待ちしております♪
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 さて皆様、感じて頂けましたか?

「えっ?何がって?」

 鼓動ですよ(笑)黒鯛の鼓動じゃなくて、もちろん?私の鼓動。

不安の鼓動を(爆)

 釣りライターは日本中、相当数いらっしゃると思いますが、誰もされたことがない、おそらく前人未到の、記念すべき第1回から本命を釣らないボーズの釣行を記事にした執筆者ゆりちゃんです。

でも、ボーズも釣りの楽しさの一つとして、有りのままお伝えしていこうと思いますし、釣れなかったり、負けたりした時こそ、学ぶことは多いじゃないかと思います。これからも切磋琢磨していきますので、「黒鯛心悸」よろしくお願い致します。